2009年度
『アイヌ民族差別に関する学習会』報告
開催期日:2009年12月9日(水)午後2時〜午後6時まで
講 師:松岡 満雄 師(第12組・廣円寺住職) 結城 幸司 師(北海道アイヌ協会)
助言指導:藤田 光代(照願寺)
会 場:札幌別院 大広間
参加人数:37名(別院列座を含む)
参加寺院数:20ヶ寺
スタッフ部門名:社会教化部門
スタッフ人数:3名 吉田 康徳 藤田
善弘 佐々木 強
実施目的:同朋会運動の更なる50年の歩みに向けて、差別の問題と向き合うことは重要課題である。今後の学習会に、昨年度発刊されたアイヌ民族差別に関する学習資料集がどう活用できるのか模索する。
テ ー マ:「共なる世界を願って」
報 告
昨年の12月9日、ご講師に北海道アイヌ協会の結城幸司氏と第12組廣円寺住職松岡満雄氏を迎え「アイヌ民族差別に関する学習会」が開催されました。
講義1では松岡満雄先生に「北海道開教の歴史と課題」についてお話し頂きました。先ず先生は本願寺道路・「錦絵」周辺地図をもとに、現如上人ご一行が歩かれた軌跡について説明下さいました。次に北海道の歴史について
明治以前松前藩は、アイヌ民族との交易によって収入を得ていた。
やがてその権利を商人に請け負わせるようになった。
商人たちは利潤を追求するあまりアイヌ民族に過酷な労働を強いたため、遂にはアイヌ民族の不満が爆発し各地で蜂起した。
その反省から明治政府は蝦夷地を日本の領土とするため、アイヌ民族の伝統文化を否定し、皇民化を謀り同化政策を推し進めた。
ことを重点にお話し下さいました。
次に東本願寺については、
1530年代頃に松前に専念寺が存在しており、各地に専念寺の掛所を設け、教線の拡大を計っていた。
蝦夷地が北海道と改称されてからは明治政府の方針に積極的に加担し北海道開拓開教に着手し、1870年には当時19才の現如法嗣が京都から名古屋・北陸・東北など各地を巡りながら「移民奨励・新道切開・教化普及」を柱にご門徒を誘い、莫大な費用をかけ蝦夷地に本願寺道路を建設した。
更には、それらの様子を当時流行していた錦絵に描き、偉業として顕彰した。
1977年に大師堂爆破事件が起き「東本願寺がアイヌモシリを侵略した」という犯行声明は、宗門に衝撃を与え近代史の再検証が課題となった。
これらのことを指摘し、次の三つの問題点を提起下さいました。
(1) アイヌ民族差別の問題を学ぶうえで、アイヌ民族を「御同朋御同行」とみてきたのか。
(2) 北海道開教の内実はどうだったのか。
(3) 他宗派に先駆けて教線を張った東本願寺に、アイヌ民族のご門徒が少ないのはなぜか。
以上の講義を受け資料集発刊の願いについて以下のように纏めて下さいました。
見落としてきた非違の歴史を正視し、課題としなければならない。偉業か侵略かの対立ではなく、共なる世界を願うという視点が大切であり、本当の開教とは一人ひとりに信が開かれていくことであると言われ、まずは資料集を読んで自身の歴史観を確かめてほしい。
講義2では北海道アイヌ協会より結城幸司氏にお越しいただき、「イランカラプテ」(あなたの心に触らせて下さい)とアイヌ語の挨拶からお話し下さいました。それからご自身のことを振り返り、
自分本来の姿を通して今のアイヌを見てほしい。「アイヌ」という言葉は、もっとも尊敬される人間になった時に付けられる。しかし、自分はアイヌを嫌っていた。アイヌを低く自分自身の中で見ていた。今はむしろ、アイヌと呼ばれるように生きる生き方をしなければならないと思っている。
幼少時代は貧しく、父である結城庄司は解放運動にのめり込み、家族はばらばらになり、そんな父を嫌っていた。でも、「父が書いた本を読み、父をまねて講演するうちに、言い続けることの難しさや、仲間を守る運動の大変さを理解し、今では父を尊敬しています」
と語られ、更にアイヌ文化を守るのは「北海道“愛”」であると強調し、そのためには権利回復だけではなく教育も大切であると提言されました。
そして文化の面について
・
アイヌにとっての教えとは、森羅万象に思いを寄せること。祈りは一方通行でよい、今まで見返りを得ようとしていた。
・
言葉は本当に大切、発した言葉が自分を導いてくれる。
・
ユーカラ(神話)が何より大事で、日本人は神話を失っている。
などを紹介いただき、これまで伝えられてきた言葉(物語)をもって、これからの北海道を守っていきたいとお話し下さいました。
その後は語り合いの時間を持ち、助言指導の藤田光代氏(照願寺)は、ご自身がアイヌの人たちとの出会いから学ばれたことを通し、これまでの教団の有様と北海道に身を置く僧侶の問題点を指摘下さり、改めて身を糾された思いです。その後参加者同士の意見交換が行われ、閉会となりました。
・感想や反省点
『アイヌ民族差別に関する学習資料集』発刊に当たって、当初より学習会を開催したいと考えておりましたところ、教区の助成を頂いて身のある研修会となりました。同朋会運動の更なる歩みに向けて、自分はどこに立ち何を求めているのか、担うべき課題を見出していきたいと思います。
また、組内寺院への趣旨の徹底と参加の呼びかけが不十分だったために、組内育成員・衆徒などの参加が伸び悩みましたが、別院列座の皆様が積極的にご参加下さいましたことが何より有難いことだったと思います。
秋安居 報告
開催日時・・・・・2009年11月30日・12月1日 両日とも午後2時から5時まで
開場・・・・・・・・・・札幌別院会館 大広間
講師・・・・・・・・・・鍵主 良敬先生(大谷大学名誉教授、北海道教区第19組聖光寺住職)
参加者・・・・・・・30名(内別院6名、執行部部員関係10名)
参加寺院数・14ヶ寺
テーマ・・・・・・・「『顕浄土真仏土文類』窃以 − 迷失せる恩徳」
・報告
本来、インドの僧侶が無駄な殺生を避けるため雨期に建物にこもり教えを学ぶというのが安居ですが、本講座は昨年本山で開かれた「夏安居」の内容を多くの人に聞いてもらうための講座であり、今期寺属教化部門の活動としては昨年に引き続き二回目であります。
2日間にわたり講義を頂きましたが、まず講題の「窃以」と言う文字について、教育部より「竊以に直してはどうか」という指摘があったが、「われわれは 仏の領域を窃盗している。だからこのままで 行きたい」と申し上げた経緯がある事をお話しされました。
内容は真仏土巻、「浄土真宗は大乗の中の至極」ということが眼目であり、非常に難解なところでした。
往相還相の二回向、教・行・信・証の四法を踏まえ、基盤としての位置づけを「真仏土巻」に明らかにしながら「化身土巻」への展開を目指されており、光・寿二無量の誓願をもってなされる「真仏土」の建立の意義を明らかにすることが「真仏土巻」の課題であり、「真仏土」こそが二回向四法として表される浄土の真宗の基盤を成している。さらに
真・仮・偽の問題に対して「真とは仮に対し、偽に対する」と引用され、仮は「聖道の諸機、浄土定散の機なり」とあるように機にかかわり、偽は「六十二見、九十五種の邪道これなり」と言われるように誤った見と道にかかわるものと理解されていると述べられた後、このことについて大乗仏教の唯識の「三性説」の視点から真・仮・偽の問題を探られている。唯識の三性とは依他起性(具体的事実)と遍計所執性(迷いの認識)と円成実性(真理)であるが、それぞれ仮は依他起性、偽は遍計所執性、真は円成実性にあたるものとして見る事ができる、と言う視点から講義を頂きました。
座談会は質問を拾い上げる時間となりましたが、質問を先生にお伝えして次の日に講義を頂いたので2日にわたる研修ではこういう形が望ましいと思います。懇親会では「北海道教区の皆は頑張って欲しい。どうか勉強して欲しい。」という先生の熱い言葉を頂きました。
・反省点
もう少し参加人数が多ければ良いと感じました。会場内が寂しい感じがしました。テキストに事前に目を通して研修に臨む呼びかけをしたほうが良かったかも知れません。全体を通して実りある研修事業だったと思います。